所長メッセージ
2021/06/30

県立学校中堅教諭等資質向上後期研修開講式

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 6月29日(火)は県立学校の中堅教諭等資質向上後期研修開講式で挨拶をしました。この10年を振り返りますと、日本の社会は少子高齢化やグローバル化、情報化の進展に伴い大きく変化しました。特に情報化については、昨年から続く新型コロナウイルスの猛威がICT・AI等の需要を高め、世界全体で急加速した感があります。
 まさにこの未来の予測が困難な時代において、子どもたちが伝統や文化に立脚した広い視野を堅持しながら、よりよい社会を築くためには高い志とともに、物事を主体的に判断し、自ら課題を見つけ、多様な人々と協働しながら新たな価値を生み出していく力が必要となります。
 さて、皆さんはこの10数年の間、様々な経験を積み、教科指導、学年・分掌業務、部活動指導などの組織運営に主にリードオフマンとして取り組んでこられたことと思います。
 しかし、日々の教育活動に邁進するあまり、教育の今日的課題や、子どもたちが置かれている状況、あるいは、これまでの教育活動を振り返り、「今後、何をなすべきなのか」などについてゆっくり考える時間がなかなか取れなかったのではないでしょうか。また、同僚とともに学び・支え合う時間などは確保されていたでしょうか。
 今回、挨拶の中で紹介したのは初等教育資料4月号巻頭の分藤賢之文部科学省初等中等教育視学官から寄せられた『エール』と題された文章です。
 次に示すのが、氏が取り上げている『ぼくだってやれる わたしでもできる』(昭和41年刊行)というタイトルの作品集の中から「もしこの肩が」という詩です。

 

もしこの肩が、この両手が、十本の指が自由に動いたら、私は何をするでしょう。

もしほんとうに、肩が、両手が、十本の指が自由に動いたら、私はおばあちゃんの背にとびつくでしょう。

 そして、一日中肩をもむでしょう。次の日は髪をすいてあげるでしょう。おいしいお茶を入れてあげるでしょう。


 学びの主体は児童・生徒にあり、よりよく生きたいという願いを叶えることに教師の仕事の基本があることを改めて問いかける詩だと思います。私は、特別支援学校はもとより高等学校においても、学びのゴールはどこかという普遍的な問いは常に教師の内省が大切だと思っています。子どもの人生の種はどこに着地しどこから根をつけるかは誰もわかりません。そのためにも子どもが自ら育つことへの主体性の引き出し方について、この半年間の研修全体をとおして理論を学び、学校に戻って実践と往還させる中で確かな手応えを感じて欲しいと願っています。今回は、春の赤石渓流(鰺ヶ沢)、夏の睡蓮沼(八甲田)、秋の紅葉山渓流(黒石)、冬の奥入瀬を織り交ぜ多様な4枚の写真をコラージュしました。
 挨拶の結びに、中堅後期を迎えポストミドルリーダーの先生方へ私からのメッセージとしてレイモンド・チャンドラーの言葉、「タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない」を贈り、12月10日の閉講式での再会を約束したところです。


07:08
2021/05/24

中堅教諭等資質向上前期研修(県立学校)開講式

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 5月24日(月)は県立学校の中堅教諭等資質向上前期研修開講式で冒頭の挨拶をしました。教職経験が4年から6年を経過した先生たちは、教科指導はもとより学級経営や生徒指導など教育活動全般にわたって自信が深まる一方で、学校における役割が増し、更に保護者や地域から寄せられる期待も大きくなり、責任の大きさをあらためて実感していることと思います。
 挨拶の中では『易経』を引用しました。中でも「離為火」(りいか)の考え方について伝えたところです。日本を代表する経営者である稲盛和夫氏は「人生の成果を決するものは、考え方と熱意と能力のかけ算である」と述べています。「離為火」の思想では、まさに情熱の炎の正しい燃やし方に道があると説かれており、このことは教職に携わる者のみならず、人生を相渉り仕事をしていく上で根幹となる姿勢ではないかと思っています。
 二つ目の話題として、『月刊兵庫教育』5月号で神戸大学の渡邊信隆教授の「危険な職業」という文章について深い共感を得ましたのでそのことを伝えました。ある学校の職員室に掲示されていた「教師は持ち前の知識でその日その日を送ることの出来る危険な職業です」という言葉を例にしたコラムです。ちょうど中堅に位置している先生方にとっては、渡邊先生のいう「30歳前後でその危険に心底気づくかことができるか否か」という分岐点に差し掛かった時期であろうと思います。私自身の反省からも仕事に見通しが利き始め、慣れてきたころに「決河」の危うさがあったという実感があります。
 今回、中堅研修前期の先生方にはスライド冒頭で白神山地の静謐な「湧き水」を、結びには勢い盛んな奥入瀬の「渓流」の写真を使用しました。ここには、一人一人の先生方がこれからの教職人生を大河の流れのように大きく成長させて欲しいというメッセージを込めています。
11:42
2021/05/11

小学校初任者研修開講式

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 5月11日に初任者研修(小学校)学級経営基礎講座Ⅰが開講しました。県内の小学校に採用された初任者(中核市を除く)が一堂に集まる初の研修でした。研修に先立ちまして、私からは次の4点を9枚のスライドを用いて伝えたところです。
 1点目は「謙虚」さと「独善」との関係です。これはすべての校種の初回でお話しているのですが、何に対して謙虚であるのか。それは学問に対する謙虚さであり、子どもに対する謙虚さであること。その一方で、先生という仕事は、ある意味において常に独善に陥りやすい面もあるということを心に留めておいて欲しいことを伝えました。時が経過して慣れてきたかなと思った頃に、自分を振り返り、あるいは時代の流れをつかみ、何かに気づける先生であって欲しいと願っています。
 2点目は5月5日の日本経済新聞に掲載された埼玉県の小学校6年生柴田亮君の「カブトムシ「夜行性」覆す」の記事を紹介し、「未来につながる学力」として、こどもの不思議に思う気持ちを探究心へと発展させている好事例を取り上げました。今回、この研究はアメリカの生態学専門誌「エコロジー」に掲載されることになりましたが、(詳細は山口大学のプレスリリースを参照ください。)新聞記事の中で山口大学の小島講師の「私はアドバイスと翻訳をした程度でほとんどが柴田さんの主体の研究。完成度はかなり高い」という言葉が印象的です。先生が小さな研究者に対して、その人格と学問に対して謙虚な言葉で説明している点に好感を持ちました。そこには子どもが主体的であることと両者の対話的な関係が学びを深化させている様子がよく伝わってきます。
 3点目ですが、これも全校種に共通しているのですが、「子ども」というドロシー・ロー・ノルトの詩を紹介したところです。特にステージ上から見ていて先生方の反応が大きかった最後のフレーズの「可愛がられ抱きしめられた子どもは世界中の愛情を感じとることができる」を今一度掲載しておきたいと思います。
 結びに、種差海岸から太平洋を臨む画像とともに、斎藤喜博氏の「子どもは未来そのもの」という言葉を紹介しました。まずはこの1年、健康に留意されて目の前の子どもに最善を尽くしていただきたいと願っております。
12:23
2021/05/10

教頭・事務長研修開講式

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 5月10日に開催された教頭研修・県立学校事務長研修の所長あいさつでは、はじめに危機管理について私の経験談を紹介した上で、主に組織の「和の要」の役割についてお話しさせていただきました。用いたのは扇子の写真です。この話題は平成25年に教頭として県立弘前実業高校に着任した当時に、研修で得た知見に私なりにアレンジを加えて伝承したものです。
 扇子には要という骨を束ねる金具があります。この絞まり具合が日々刻々実に微妙で、これが緩くなると学校全体の空気を受け止めることができません。これでは、情報のグリップ感が乏しいまま扇子自体の値打ちが下がってしまうという悪循環を招き、結果的に学校全体の士気が下がってしまうことになりかねません。逆に堅すぎると扇子の中骨がタイミングよく広がらないという事態を招きます。これはこれで窮屈で、延いては教室で過ごしている子どもにとっても良い環境が整いません。緩すぎず堅すぎず、常に調整することが和を保つ秘訣であると教えられました。
 では、そのためには何をすれば良いのか、これは言うまでもなく「対話」です。こちらから脚を運んで話を聴く対話と様々な方面から聞こえてくる声を受け止めつつ行う対話です。今回はソナーとアンテナを例にしました。苦しい時こそユーモアを、相手の心を酌み取る感受性の豊かさが対話の質を高めるものと思っています。笑いと涙は感動の源泉であり、感動こそ教育の要だと思うからです。
 結びに、本県の十二湖の青池の画像とともに己を振り返る「今日の『明鏡止水』の時を持つ」ことをお伝えしたところです。まずはこの1年、健康に留意されて教頭・事務長として充実した日々を過ごされることに心からエールを送ります。


 


12:08
2021/05/06

中学校初任者研修開講式

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 大型連休明けの5月6日(木)に初任者研修中学校学級経営基礎講座Ⅰが開講しました。開講式にあたって私からのあいさつでは主体的・対話的で深い学びについて述べました。私自身の教員生活を振り返り自戒をこめて、生徒の主体的な姿勢を引き出すためには、まず教師の主体性が求められていることを実感しています。真摯に向き合うこととはどういうことかを事例を交えて伝えました。
 次に中学2年の国語の教科書の文学的文章において、1955年以来採択され続けている『走れメロス』(太宰治)について、私なりに学びの探究の一例として、Society2.0からSociety5.0へのVersionの重なりを説明したところです。その上で、対話的とはどういうことか、会話が弾むこととの違いを『ギリシャ哲学の対話力』(斉藤孝)の書著を紹介しながら伝えました。
 結びに私が青森市立造道中学校で教育実習を行った際に、ご指導いただいた故坂本正衛先生からの色紙の言葉「峠に立てばまた向こうの山が見える」(井上靖)を八甲田山の山並みの画像とともに紹介しました。これから長い教職人生ではありますが、その節目節目で見える景色が違います。しかしながら、山の伏流水にはいつも人間愛が流れていることを忘れないでほしいと思います。その一言を言い忘れましたので、この場をお借りしてメッセージとして付け加えたいと思います。まずは一年間、健康に留意し、目の前の子どもたちと共に教師として成長していくことを心より期待しています。
12:53
2021/04/27

校長研修開講式から

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 4月27日に行われた校長研修開講式では、今年度新たに採用された小・中・高等学校及び特別支援学校の校長先生に対して挨拶をさせていただきました。10分という限られた時間でしたので、私からは「校長の責任」の一点に絞ってお伝えしたところです。
 その中で2つの著書を紹介しました。1冊目は『教育のリスクマネジメント』(2013 田中正博・佐藤晴雄共著 時事通信社)です。サブタイトルにある「子ども・学校を危機から守るために」という趣旨の実践的なトップマネジメントが紹介されています。特徴は『内外教育』を発行している時事通信社がインターネット発信する『学校支援サイト』の中で連載されたコラムがもとになっているという点です。
 もう一冊は、私自身が弘前大学教職大学院に勤務し、ミドルリーダー養成コースの授業を担当した時にテキストとして使用した『失敗の科学』(2016マシュー・サイド著 有枝 春訳 ディスカバー21)です。この本は、冤罪として記憶に新しいと思いますが、当時厚生労働局長だった村木厚子氏が郵政不正事件で逮捕され5ヶ月間に及ぶ拘置所生活を強いられた際に、自分を支えた150冊の書物の中でも特出された1冊です。(『日本型組織の病を考える』より)
 失敗から学習する組織とはどのような点に優れ、また学習できない組織にはどのような原因が考えられるのか、について世界の様々な業界を横断し、具体事例をもとに書かれています。
 前者は危機への向き合い方であり、後者は危機を生む人間の心の在り方を問うものです。年度の始まりであり、これから先の教職人生において校長としての責任を担う先生方へ、たいへん僭越ではございますが、私からのエールとして紹介したものです。本書については当センターのライブラリーに寄贈しました。
12:50
2021/04/16

講座が始まりました。

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 4月12日(月)に開催された第1回初任者研修校長等連絡協議会(県立学校)及び初任者拠点校指導教員研修会(特別支援学校)の所長挨拶では次の話題を盛り込みました。
 教師として最も中心的な資質の育成として、子どもを慈しみ、真剣に子どもと向き合うことの大切さを踏まえながら、初任者を支援していく必要があること。
 加えて、日本経済新聞(4/8)Deep Insight村山恵一氏の記事から、今、企業の学習の場として「人材を丸抱えして自社のカラーに染め上げる手法は通用しない」という現状と「学びは年齢を超えたテーマになって」いること。時代は「新しい学び方に慣れ親しんだ世代が台頭し、『ここは学べる、自分を磨ける』と感じる会社でなければ選択肢からふるい落とされる」段階にあること。「わが社は若い人たちの学びのニーズを満たせているか」という視点で経営者が自己点検する必要があることなどを引用しながら、社会の中における教職を捉え直し、学校におけるOJTとセンターにおける研修の充実を両輪で進めていきたいことをお願いしたところです。
 次に4月15日(木)の初任者研修(県立学校・実習助手)の開講式において私から次の話題を中心に講話(15分)を行ったところです。
 Society5.0に至るまでの1.0から4.0のプロセスに触れ、特に縄文時代の戦争のない1万年という持続社会の存在を再確認したところです。
 その上で、「謙虚」と「独善」、「新鮮」と「惰性」の関係について、世阿弥の「離見の見」の考え方の実践を伝えるとともに『礼記』の中の「教学相長」(きょうがくあいちょうず)を引用し、人に教えてみて人に教えることの難しさを学ぶこと、すなわち教えることと学ぶことは一体であることを伝えました。
 最後に、スウェーデンの中学校社会の教科書から、ドロシー・ロー・ノルトの詩「子ども」を紹介したところです。


 批判ばかりされた子どもは 非難することをおぼえる。
 殴られて大きくなった子どもは 力にたよることをおぼえる。
 笑いものにされた子どもは ものを言わずにいることをおぼえる。
 ・・・・・(略)・・・・
 フェアープレーを経験した子どもは 公正をおぼえる
 友情を知る子どもは 親切をおぼえる
 安心を経験した子どもは 信頼をおぼえる
 可愛がられ抱きしめられた子どもは 世界中の愛情を感じとることをおぼえる


 初任者は全体の教職員に占める割合は約2%に過ぎません。しかし、新しい風を運んでくれる貴重な存在ですので、各学校におかれましては機に応じ本人自身に気づきを促すご指導ご支援をお願いしたいと思います。当センターにおいても「若い人の学びのニーズ」に応えるべく研修の充実を進めて参ります。


11:38
2021/04/06

年度はじめのご挨拶

| by サイト管理者

青森県総合学校教育センターのホームページをご覧いただきありがとうございます。令和3年度がスタートしました。所長を務めます三戸です。

 さて、当センターのホームページですが、令和2年度当初の目標アクセス数を120万件に定めておりましたところ、年度末の累計実績値は1,451,235件となり、達成率は120.9%でした。前年度は1,235,297件(達成率102.9%)であったことを踏まえると相当な伸び率でした。要因はやはりコロナによる影響が大きいと思われます。特に4月から6月にアクセスが集中しており、学校の一斉休業措置や感染拡大防止のための講座の開催方法の転換など、情報の必要性・緊急性がアクセス数に反映されていることを改めて実感しているところです。

 

 令和2年度は162の講座を開設し、約4300人(延べ数)の教職員が受講しました。また、相談事業では電話及び面談による件数が延べ約3000件、特別支援教育に関する相談は延べ約300件でした。特に夏期休業開けの9月の電話相談件数の増加が著しく(R163→②235)、逆に5月は激減(R150→②89)の結果も併せて、通常とは異なる時勢が様々な形で子どもの心に影響を与えたものと認識しております。

 

 当センターでは「校内研修等講師派遣事業」というアウトリーチタイプの研修も行っております。昨年度は1262511人の参加者がありました。学校の事情に応じて指導主事を派遣し、各校の校内研修を支援します。

 

 資料・情報提供事業として、2階のライブラリーでは全国の教育センター刊行物、教育系大学等の教育刊行物、研究指定校の研究報告書等の閲覧ができます。特に研究指定校の報告書については、教育現場の生の声が反映された貴重な情報です。是非、本県の教員が子どもたち・生徒たちと取り組んだ研究成果について閲覧いただき、次の研究の参考にしていただければと願っております。今年度はさらに教育を取り囲む様々な分野の書籍の充実を図ろうと思っておりますので、来所の際は是非お立ち寄りください。

 
 当ホームページは、皆様にとって必要な情報をいち早くお届けするツールとしての役割を目指しておりますが、一方では各課がその校種の特性に応じて長年積み重ねてきた縦断的な取組もあります。中には皆様の興味関心に響くお宝コンテンツも発掘できると思いますので今一度深掘りしてみてください。

 

 皆様のご感想やご意見・ご要望をお寄せいただければ、改善に役立てたいと考えておりますのでどうぞよろしくお願いします。

 なお、所長メッセージは随時更新を予定しております。まずは年度はじめのご挨拶としてのメッセージをお届けしました。お読みいただきありがとうございます。


14:14